日本矯正歯科学会認定医・歯学博士 河底晴紀
歯を失ったとき、皆さんはどのように感じますか?「1本くらいなら問題ないだろう」と考える方もいるかもしれませんが、実は歯を1本でも失うと、噛む力や他の歯の健康に大きな影響が出る可能性があります。歯は互いに支え合っているため、1本の歯を失うことで隣接する歯や噛み合う歯に負担がかかり、噛み合わせが乱れてしまうのです。
今回は、歯を失った場合に選べる3つの治療法、「ブリッジ」「インプラント」「入れ歯」について、それぞれの特徴と利点・欠点を詳しくご紹介し、どの治療法がご自身に最適かを見極めるためのヒントを提供します。
1. インプラント治療とは?
インプラントの特徴
インプラントは、失った歯の根の代わりにチタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。この方法は自分の歯とほぼ同じ感覚で使用でき、機能的にも非常に優れています。
インプラントのメリット
- 強い噛む力を取り戻せる:インプラントは顎の骨にしっかりと固定されるため、食事の際もほとんど自分の歯と同じように噛むことができます。硬いものも安心して食べられると評判です。
- 他の歯に影響がない:インプラントは失った部分に直接埋め込むため、隣の歯を削ったり支えにする必要がなく、健康な歯に負担をかけません。
- 自然な見た目:インプラントは審美的にも優れています。自然な歯と見分けがつかないほどの美しさを保てます。
インプラントのデメリット
- 費用が高い:インプラントは保険適用外で、1本あたり40万円ほどかかることもあります。しかし、自分の歯を取り戻す価値があると考え、多くの方が選んでいます。
- 手術が必要:インプラント治療は外科手術を伴います。顎の骨が十分にない方や、全身疾患がある方には適用できない場合があります。
- メンテナンスが重要:インプラントは長期にわたって使えるものですが、毎日の歯磨きや定期的なメンテナンスが欠かせません。
2. ブリッジ治療とは?
ブリッジの特徴
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削り、橋のように人工の歯をかける治療法です。ブリッジは取り外しができない固定式の治療で、隣の歯に接着剤で固定されます。
ブリッジのメリット
- 安定した噛み心地:ブリッジは固定されているため、取り外し式の入れ歯に比べて、しっかりと食事を楽しめます。
- 見た目が自然:ブリッジも審美的に優れており、自然な仕上がりで見た目の美しさを保てます。
- 比較的短期間で治療が完了:ブリッジ治療はインプラントに比べ、治療期間が短く、手術も必要ありません。
ブリッジのデメリット
- 健康な歯を削る必要がある:ブリッジを装着するためには、隣の健康な歯を削る必要があります。そのため、歯にダメージが残る可能性があり、将来的に問題が発生することがあります。
- 長期的には安定性に欠ける場合がある:土台となる歯が弱くなったり、歯茎が痩せることでブリッジがうまく機能しなくなることがあります。
3. 入れ歯治療とは?
入れ歯の特徴
入れ歯は、取り外しができる義歯で、部分入れ歯と総入れ歯があります。部分入れ歯は失った歯が一部の場合に使用し、総入れ歯はすべての歯を失った場合に使用します。
入れ歯のメリット
- 費用が比較的安い:入れ歯は保険適用が可能なため、インプラントやブリッジに比べて費用を抑えられます。
- 取り外しが可能:入れ歯は自分で取り外しができるため、手入れが簡単で衛生的です。
- 治療期間が短い:入れ歯は比較的短期間で作成でき、手術も不要です。
入れ歯のデメリット
- 噛む力が弱い:入れ歯は固定されていないため、インプラントやブリッジと比べると、噛む力が弱くなります。硬いものを食べるのが難しい場合があります。
- 異物感が強い:入れ歯は異物感があり、口の中でなじむまでに時間がかかることがあります。また、発音がしづらくなることもあります。
- 見た目に配慮が必要:部分入れ歯の場合、金属のバネが見えることがあり、審美的に気になる方もいるかもしれません。
どの治療法を選べばよいか?
インプラント、ブリッジ、入れ歯はそれぞれにメリットとデメリットがあり、最適な治療法は個々の状態やニーズによって異なります。
- インプラントは、長期的に安定した噛み心地と美しい見た目を求める方に最適です。ただし、費用がかかることを理解して選択する必要があります。
- ブリッジは、手術を避けたい方や、比較的短期間で治療を終えたい方に向いています。ただし、健康な歯を削るリスクを考慮する必要があります。
- 入れ歯は、費用を抑えたい方や、取り外しができる義歯を希望する方に適していますが、噛む力や装着感の面で他の治療法に劣ることを理解しておくべきです。
まとめ
歯を失った場合、インプラント、ブリッジ、入れ歯という3つの選択肢があります。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあるため、ご自身のライフスタイルや予算に応じた選択をすることが大切です。歯を失った場合、早めに治療を行うことで、他の歯や噛み合わせへの影響を最小限に抑えられます。
当院では、患者様一人ひとりに最適な治療法をご提案し、長期的な口腔健康をサポートしています。歯を失ってお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。
・歯学博士
・日本矯正歯科学会認定医
◾️所属
・FCDC
・福山市歯科医師会 理事
・一般社団法人福山市歯科医師会附属福山歯科衛生士学校 歯科矯正学講師