日本矯正歯科学会認定医・歯学博士河底晴紀
今回は「歯磨きの仕方」について詳しくお話しします。日常的に行っている歯磨きですが、その正しい方法や使う道具によって効果は大きく変わってきます。しっかりとしたケアを行うことで、むし歯や歯周病を予防し、口腔内の健康を守ることができます。
歯磨きの頻度と時間
まず、皆さんは1日に歯磨きを何回していますか?そして歯磨きにかける時間はどれくらいでしょうか?
理想的な歯磨きの回数は、1日最低2回、特に夜寝る前の歯磨きはとても重要です。また、歯磨きにかける時間としては7分~10分が推奨されています。すべての歯磨きでこの時間をかけるのは難しいかもしれませんが、少なくとも夜寝る前の歯磨きにはしっかりと時間をかけましょう。
ただし、なんとなく10分を過ごすのではなく、正しい歯磨き方法を意識することが大切です。
歯磨きの仕方:おすすめの方法
歯磨きの方法にはいくつかのスタイルがあります。お口の状態に合わせて適切な方法を選ぶことが重要です。
1. 縦磨き法
この方法は、歯と歯の間が広く、細かい操作が苦手な方におすすめです。
- 歯ブラシの毛先を歯に対して直角に当て、歯の根元に向けて上下に動かします。
- 歯の裏側は歯ブラシを縦に使い、しっかりと磨きます。
- 噛み合わせの面には歯ブラシを前後に動かして磨きます。
- 奥歯には歯ブラシを斜めに入れて、往復させながら磨きます。
2. スクラビング法
軽い歯肉炎や知覚過敏がある方に向いています。
- 歯ブラシの毛先を歯に対して直角に当て、小刻みに左右に動かします。
- 前歯の裏側は歯ブラシを縦にして、1本ずつ磨きます。
- 奥歯は歯と歯の境目に毛先を当てて小刻みに動かし、丁寧に磨きます。
3. バス法
歯茎が腫れている、出血がある、歯周ポケットが深いなどの症状がある場合には、バス法がおすすめです。ただし、操作が難しいため、正しい方法で行わないと歯茎を傷つけることがあります。
- 歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目にあて、45度の角度で小刻みに動かします。動かすというより、軽く振動させるイメージです。
- 前歯の裏側も同様に、歯ブラシを縦にして振動させながら1本ずつ磨きます。
- 奥歯の裏側も表側と同様に磨きます。
これらの方法の中で、自分のお口の状態に合った方法を選んで行うことが重要です。
乳歯と虫歯のリスク
乳歯はとても虫歯になりやすいことをご存知でしょうか?乳歯は永久歯に比べて未熟なため、虫歯が進行しやすいのです。特に、次のような部分が虫歯になりやすいとされています。
- 上の前歯:歯の付け根や歯と歯の間に汚れがたまりやすい部分です。
- 奥歯:2~3歳頃に生えてくる奥歯は、特に虫歯になりやすいです。
乳歯が虫歯になると、進行が早いため注意が必要です。
子どもの歯磨きのサポート
お子さんの歯を虫歯から守るためには、早い段階から歯磨きの習慣をつけることが大切です。歯が生え始めたらすぐに口の中のケアを開始し、次のような方法で歯磨きの練習をさせましょう。
- 生後7~8ヶ月頃から、食後にぬらしたガーゼで歯を拭く。
- 乳児用歯ブラシで歯磨きを始め、1歳半頃から本格的に歯ブラシを使用。
- 食べた後に歯ブラシを持たせる習慣をつけ、歯ブラシに慣れさせる。
また、仕上げ磨きはお子さんの歯を守るために非常に重要です。
- 2歳くらいまで:保護者が全面的に歯磨きを行います。
- 6歳くらいまで:お子さんが磨いた後、仕上げ磨きを行います。
- 9歳くらいまで:お子さんが歯磨きを行った後、仕上げのチェックを行います。
年齢はあくまで目安であり、子どもの成長や性格に応じて柔軟に対応しましょう。
磨き残しを防ぐためには
実は、歯磨きだけでは約70%しかプラーク(歯垢)を除去できないと言われています。歯磨きに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシを使用することで、歯と歯の間の汚れもしっかりと除去することができます。
フロスや歯間ブラシは、食べかすを取るためのものではなく、歯ブラシと同様にプラークを除去するための重要なアイテムです。
オススメの歯磨きアイテム
ここで、当院でおススメしている歯磨きアイテムをご紹介します。
1. フィリップス ソニッケアー(電動歯ブラシ)
フィリップス ソニッケアーは、音波水流で歯垢を効果的に除去する電動歯ブラシです。手磨きの10倍もの歯垢除去力を持ち、奥歯や歯間部のプラークもしっかりと取り除くことができます。
2. テペ(歯ブラシ)
スウェーデン製の「テペ」は予防歯科の先進国で非常に人気のある歯ブラシです。スウェーデンの薬局で購入される歯ブラシの77.2%がテペ製と言われています。歯ブラシの交換は1ヶ月に1回が目安です。毛先が開いた歯ブラシでは歯垢除去力が落ちるため、定期的に交換しましょう。
歯科衛生士による歯磨き指導
当院では、患者様一人ひとりに合わせた歯磨き指導を行っています。どんなに優れた道具を使用していても、正しい方法で磨かなければ効果は発揮できません。ぜひ、来院時に歯科衛生士にお声かけください。
まとめ
歯磨きは毎日の習慣ですが、その方法や使う道具次第で結果は大きく変わります。正しい方法で時間をかけて行うことが、むし歯や歯周病の予防につながります。お子さんの歯磨きについても、親御さんのサポートが非常に重要です。丁寧なケアを行うことで、生涯にわたって健康な歯を保つことができます。
お口の健康を守るために、適切なケアを行いましょう。そして、定期的に歯科医院でチェックを受けることもお忘れなく。
この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。
・歯学博士
・日本矯正歯科学会認定医
◾️所属
・FCDC
・福山市歯科医師会 理事
・一般社団法人福山市歯科医師会附属福山歯科衛生士学校 歯科矯正学講師