日本矯正歯科学会認定医・歯学博士河底晴紀
今回は、子どもの成長における一大イベントである「歯の生え変わり」についてご紹介します。乳歯から永久歯に生え変わる際には、いくつかのトラブルが発生することがあります。親御さんにとって不安になる瞬間もあるかもしれませんが、トラブルへの対処法を理解し、適切に対応することが大切です。
乳歯から永久歯への交換の仕組み
まずは基本的な知識として、乳歯から永久歯への生え変わりの仕組みを説明します。乳歯は、単に一時的な歯というわけではありません。次に生えてくる永久歯を誘導する「ガイド」としての重要な役割も持っています。つまり、乳歯が正しく生えることは、後々の歯並びや噛み合わせに大きく関係します。
生後9ヶ月頃に乳歯が生え始め、その頃から顎の中では永久歯もゆっくりと成長しています。3歳ころには乳歯がすべて生えそろいますが、永久歯も同時に乳歯の下で準備を進めているのです。一般的には、6歳頃から乳歯の生え変わりが始まり、12歳頃までに完了することが多いです。
生え変わりの際には、乳歯の根が少しずつ吸収され、歯がぐらぐらしてきます。そして、乳歯の下から成長した永久歯が顔を出し、乳歯が自然に抜けていきます。このプロセスは自然であり、通常は問題なく進みますが、時折トラブルが発生することもあります。
乳歯がいつまでも抜けない場合
よくあるトラブルの一つに「乳歯がいつまでも抜けない」という現象があります。生え変わりには個人差があり、乳歯が抜ける時期が遅れることも珍しくありません。しかし、1年以上経っても乳歯が抜けない場合は、何か問題があるかもしれません。
先天性欠如とは?
乳歯が抜けない原因の一つとして考えられるのが、「先天性欠如」です。これは、永久歯の一部が先天的に欠如している状態のことを指します。最近の調査では、10人に1人がこの先天性欠如を持っているとされています。この場合、永久歯がないため、乳歯がいつまでも抜けないことがあります。
乳歯が残ったままでは、周りの歯と大きさが異なり、歯並びが不揃いになることがあります。また、奥歯の場合は咀嚼に問題を引き起こすこともあります。このような場合は、歯医者で定期的なチェックを受けることが重要です。レントゲン検査を行えば、永久歯があるかどうかを確認することができます。
永久歯が乳歯を押しのけて生えてきた場合
もう一つのよくあるトラブルは、「乳歯がまだ残っているのに、その後ろや前から永久歯が生えてくる」というケースです。この現象も決して珍しいものではなく、多くの親御さんが経験する不安の一つです。
永久歯が内側や外側に生えてくることの影響
永久歯が乳歯を押しのけて生えてくる場合、歯並びに影響を与える可能性があります。特に、永久歯が内側や外側にずれて生えてくると、将来的に歯列が乱れる原因となることがあります。このような場合は、早めに歯科医院を受診し、専門的な診断を受けることをおすすめします。
診断に基づいて、永久歯が正しい位置に生えるために乳歯を抜くべきか、それとももう少し待つべきかを判断します。時には矯正治療が必要になることもありますが、早期の対応がトラブルを最小限に抑えるための鍵となります。
乳歯は永久歯の歯並びに影響を与える
永久歯がきれいに並ぶためには、乳歯が健康であることが大前提です。乳歯が正しい位置にあることで、あごの骨(歯槽骨)がしっかりと成長し、永久歯が適切な場所に生える準備が整います。特に、歯槽骨が小さい場合、歯が生えるスペースが不足し、結果として歯並びが乱れる原因となります。
あごの成長を促すためには
あごの骨をしっかりと成長させるためには、しっかりと「噛む」ことが重要です。特に、歯の生え変わりが始まった頃(小学校低学年頃)は、噛む力を養う大切な時期です。この時期に正しい食習慣を身につけ、しっかりと噛むことで、あごの成長を促すことができます。
また、姿勢も歯並びに影響を与える要素の一つです。正しい姿勢で食事をすることも、あごの成長には大切です。噛む力を育てるためには、食欲をわかせるような食事を提供することも重要です。特に、この時期には柔らかいものばかりではなく、適度な硬さのある食べ物を与えることも効果的です。
生え変わり時期の食事について
歯の生え変わりの時期、特に小学校中学年頃になると、奥歯(臼歯)が生え変わり始めます。この時期に歯がないと、食事がしにくく、咀嚼に時間がかかることもあります。親御さんは、子どもが食事を急がないようにサポートし、しっかりと噛むことの大切さを教えてあげることが大切です。
定期的な検診の重要性
乳歯から永久歯への生え変わり時期には、様々な不安やトラブルがつきものです。歯の生え変わりが順調かどうかを確認するためには、定期的に歯科検診を受けることが非常に重要です。
学校の歯科検診では、簡単なチェックしか行われないことが多く、特に矯正治療の必要性については見逃されることがあります。矯正の専門医による診断が必要なケースもあるため、必ず定期的に専門の歯科医院で検診を受けることをおすすめします。
まとめ
歯の生え変わり時期は、子どもの成長において非常に重要な段階です。この時期に正しいケアを行うことで、将来の歯並びや噛み合わせに大きな影響を与えます。乳歯から永久歯への移行には個人差がありますが、少しでも気になることがあれば、早めに歯科医院で相談することが大切です。
当院では、乳歯のケアから永久歯への生え変わりのサポート、そして矯正治療まで幅広く対応しております。お子様の歯の健康を守るため、ぜひ定期的な検診を受けてください。
この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。
・歯学博士
・日本矯正歯科学会認定医
◾️所属
・FCDC
・福山市歯科医師会 理事
・一般社団法人福山市歯科医師会附属福山歯科衛生士学校 歯科矯正学講師