日本矯正歯科学会認定医・歯学博士 河底晴紀
「子どもの歯がなかなか生えてこない」「周りの子に比べて歯の本数が少ない気がする」——そんな不安を感じたことはありませんか?
歯が生まれつき欠損している「先天性無歯症」は、早期に気づくことで適切な治療が可能になります。
当院でも、フッ素塗布に定期的に通ってくれていたお子さんの先天性無歯症に早期に気づくことができました。
このケースからも、小さな頃から歯科に通うことの重要性が分かります。
この記事では、先天性無歯症の原因、治療方法、保険適用の範囲、そして欠損する本数について詳しく解説します。
先天性無歯症とは?
先天性無歯症の定義
先天性無歯症とは、生まれつき一部またはすべての永久歯が欠損している状態を指します。
通常、乳歯の生え変わりとともに永久歯が生えてきますが、無歯症の場合、一部の永久歯が形成されずに生えてこないことがあります。
歯の本数が少ない場合「先天性部分無歯症」と呼ばれ、永久歯が10本以上欠損している場合は「重度の先天性無歯症」と診断されることがあります。
早期発見の重要性 ~当院の事例~
当院では、フッ素塗布に定期的に通っていたお子さんのケースで、早期に先天性無歯症を発見することができました。
このお子さんは、「乳歯が抜けたのに永久歯が生えてこない」という違和感から、レントゲン検査を実施し、永久歯がもともと存在しないことが分かりました。
このように、定期的に歯科に通うことで、異常を早く発見し、適切な治療を始めることが可能になります。
先天性無歯症の原因とは?
先天性無歯症の原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関係していると考えられています。
1. 遺伝的要因
家族に先天性無歯症の人がいる場合、子どもにも同じ症状が現れることがあります。
特に、親や兄弟に歯の欠損がある場合、遺伝的要因が関与している可能性が高いとされています。
2. 胎児期の発育異常
胎児期の発育過程で、何らかの影響(母体の栄養状態、ホルモンバランスなど)を受けた結果、歯胚(歯のもととなる組織)が正常に発達しなかったことが原因と考えられています。
3. その他の要因
- 全身性疾患(先天性異常症候群、外胚葉異形成症など)
- 環境要因(妊娠中の感染症、薬の影響など)
先天性無歯症の保険適用について
先天性無歯症の治療には、保険が適用されるケースとされないケースがあります。
特に、欠損歯の本数や治療方法によって適用範囲が異なるため、事前にしっかり確認することが大切です。
1. 保険適用の範囲
- 先天性無歯症で永久歯が6本以上欠損している場合、健康保険の適用を受けることが可能です。
- 保険適用の対象となる治療法には、義歯(入れ歯)・ブリッジ・インプラントなどがあります。
2. 保険適用外のケース
- 永久歯の欠損が5本以下の場合、一般的な保険適用の対象にはなりません。
- 美容目的の矯正治療(例:審美目的のセラミック治療など)は、基本的に自由診療となります。
先天性無歯症の治療法
先天性無歯症の治療方法は、患者さんの年齢や欠損歯の本数、咬み合わせの状態に応じて異なります。
1. 義歯(入れ歯)
小児の場合、永久歯が生え揃うまでの期間に義歯を使用することで、咀嚼機能の補助や顎の成長をサポートすることができます。
2. ブリッジ
欠損歯の両側に健康な歯がある場合、ブリッジを使用して欠損部を補うことができます。
しかし、健康な歯を削る必要があるため、慎重な判断が必要です。
3. インプラント
成長が完了した成人の場合、インプラント治療が選択肢となります。
インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込むことで、自然な見た目と機能を回復させることができます。
4. 矯正治療
歯の欠損があることで、咬み合わせに問題が生じる場合には、矯正治療を併用することもあります。
先天性無歯症では何本の歯が欠損するのか?
先天性無歯症の欠損歯の本数は、個人差がありますが、主に以下のような傾向があります。
1. 一般的な欠損歯の本数
- 1~2本の欠損:比較的軽度で、矯正治療やブリッジで対応可能。
- 3~5本の欠損:義歯や矯正治療を組み合わせることが多い。
- 6本以上の欠損:保険適用となる可能性が高く、入れ歯やインプラントが検討される。
2. 欠損しやすい部位
- 上顎側切歯(前歯の横の歯)
- 第二小臼歯(奥歯の手前)
- 下顎の前歯
まとめ
先天性無歯症は、早期発見が非常に重要です。
当院では、フッ素塗布に定期的に通っていたお子さんのケースで、早期に異常を発見することができました。
このように、定期検診を受けることで、異常を早く察知し、適切な治療を開始することが可能になります。
先天性無歯症が気になる方や、お子さんの歯の発育に不安がある方は、ぜひ歯科医師に相談し、適切な検査と治療を受けてください。
この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。
・歯学博士
・日本矯正歯科学会認定医
◾️所属
・日本臨床歯科学会
・K-Project
・FCDC
・MID-G
・福山市歯科医師会 理事