日本矯正歯科学会認定医・歯学博士 河底晴紀
現代社会において、生活習慣病と呼ばれる高血圧、糖尿病、脂質異常症などの疾患はますます増加しています。それらは、”メタボリックドミノ”という概念で語られることが多く、一つの問題が次の問題を引き起こす連鎖的な構造を持つと言われています。そして、このメタボリックドミノにおいて、歯科が果たす役割は非常に重要です。
この記事では、メタボリックドミノの概要とその歯科との関連性、さらに生活習慣病を予防するために歯科がどのような貢献をできるのかを解説します。
メタボリックドミノとは?
“メタボリックドミノ”とは、健康上の問題がドミノ倒しのように次々と連鎖して発生する状態を指します。例えば、生活習慣の乱れや肥満が最初のドミノとして位置づけられ、それが糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病を引き起こし、最終的には心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患につながります。
メタボリックドミノの主なステージ
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生活習慣病の発端:
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不健康な食生活や運動不足、喫煙などが引き金となり、肥満やインスリン抵抗性が発生します。
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生活習慣病の進行:
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高血圧や高血糖、脂質異常症といった疾患が進行します。
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重篤な合併症:
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心疾患、脳卒中、腎症、網膜症、神経症などの全身疾患に発展します。
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歯科はこのドミノのどの段階でも関与できるポジションにあり、特に初期段階での介入が重要です。
歯科と生活習慣病の関連性
歯周病がメタボリックドミノに与える影響
歯周病は歯を支える組織が炎症を起こす病気であり、放置すると歯を失う原因となります。しかし、それだけではなく、歯周病が全身の健康に与える影響も無視できません。以下のような影響が報告されています:
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糖尿病の悪化 歯周病の炎症が血糖コントロールを悪化させる可能性があります。
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動脈硬化の進行 歯周病による炎症が血管内での動脈硬化を促進するリスクがあります。
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心疾患リスクの増加 歯周病と心筋梗塞や狭心症の関連性が指摘されています。
う蝕(虫歯)と栄養摂取の関係
虫歯が進行すると、食事がしにくくなり、栄養バランスが崩れる可能性があります。これが長期的に見ると生活習慣病の発症リスクを高めることにつながります。
当院の取り組み
当院では、メタボリックドミノを理解し、歯科の視点から患者さまの全身の健康を守るために以下の取り組みを行っています。
1. 予防歯科の強化
歯周病や虫歯を早期に発見し、進行を防ぐことで、全身疾患への波及を抑えます。特に定期検診やプロフェッショナルケア(クリーニング)の重要性を患者さまに伝えています。
2. 医科との連携
内科や循環器科、糖尿病専門医と連携し、患者さまの生活習慣病リスクを総合的に評価します。例えば、歯周病が悪化している患者さまには糖尿病検査を推奨する場合があります。
3. 生活習慣のアドバイス
歯科の立場からも生活習慣の改善をサポートしています。具体的には、栄養指導や禁煙支援、ストレスマネジメントのアドバイスを行っています。
歯科でできる生活習慣病予防のポイント
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定期的な歯科検診
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歯周病や虫歯を予防するために、最低でも半年に1回の定期検診を受けましょう。
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適切なブラッシング
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歯周病や虫歯の原因となるプラークを除去するため、正しい歯磨き方法を習得してください。
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フッ素の活用
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虫歯予防に効果的なフッ素を含む歯磨き粉や洗口液を使用することをお勧めします。
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生活習慣の見直し
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栄養バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙を心がけましょう。
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まとめ
メタボリックドミノは、生活習慣病が連鎖的に進行する概念ですが、歯科がその連鎖を上流で食い止める役割を果たします。特に歯周病や虫歯の予防を通じて、糖尿病や心疾患などの全身疾患のリスクを軽減することが可能です。
当院では、歯科治療を通じて患者さまの全身の健康を支えることを目指しています。ぜひ定期検診を通じて、健康な生活をサポートしましょう。
この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。
・歯学博士
・日本矯正歯科学会認定医
◾️所属
・K-Project
・FCDC
・MID-G
・福山市歯科医師会 理事