日本矯正歯科学会認定医・歯学博士 河底晴紀
矯正歯科の治療を受ける際、「これは何に使うの?」「どういう意味があるの?」と気になる言葉や器具が多いですよね。今回は、矯正歯科でよく使用される道具や用語について、初心者にもわかりやすく解説します。治療を進める中で疑問に思ったときに役立つ内容になっていますので、ぜひ参考にしてください!
IPR(アイ・ピー・アール)とは?
IPRとは「Interproximal Reduction」の略で、日本語では「歯間研磨」や「隣接面削合」と呼ばれる処置です。矯正治療の際に、歯と歯の間を少しだけ削って隙間を作る方法です。削る量は0.1~0.5mm程度と非常に少なく、歯を大きく傷つけるわけではありません。
IPRを行う目的
- 歯並びを整えるスペースを確保するため
抜歯をしなくても歯を並べるための隙間を作れます。 - 形を整えるため
特定の歯が少し大きすぎる場合や形が原因で歯並びが悪く見える場合に、形を整える目的で行われます。
痛みはある?
IPRはエナメル質という歯の表面を少し削るだけなので、痛みはほとんどありません。ただし、削る音や振動が気になる場合があります。処置後も通常の歯ブラシで問題なく清掃できるため、安心して受けていただけます。
オープンコイルとは?
オープンコイルは、ワイヤー矯正で使用するスプリングの一種で、金属またはニッケルチタン製の細いバネ状のパーツです。ワイヤーの一部に装着し、歯を移動させるスペースを作るために使用されます。
オープンコイルの役割
- 歯を動かすスペースを作る
狭い歯列にスペースを確保するために使われます。 - 隙間を広げる
歯が密集している部分にゆとりを持たせる役割があります。
装着中の感覚
装着直後は軽い違和感がありますが、次第に慣れていきます。歯が動く過程で軽い圧力を感じることがありますが、これは治療が進んでいる証拠です。
パワーチェーンとは?
パワーチェーンとは、複数の小さな輪が連結したゴム状の部品です。ブラケット(後述)に引っ掛けて使用し、歯を動かす力を強化するための道具です。
パワーチェーンの目的
- 隙間を閉じる
抜歯後のスペースや小さな隙間を短期間で閉じることができます。 - 歯並びを整える
歯を密に動かす際に使用されます。
色やデザイン
パワーチェーンは透明や白、カラフルなものなどさまざまな種類があります。患者さんの希望に応じて選べる場合もあります。
顎間ゴムとは?
顎間ゴム(がっかんゴム)は、上下の歯の位置関係や咬み合わせを調整するために使用される小さなゴムの輪です。矯正装置に引っ掛けて使用します。
顎間ゴムの役割
- 上下の咬み合わせを改善する
出っ歯や受け口の矯正に効果的です。 - 歯の位置関係を調整する
特定の歯を引っ張る力をかけることで理想的な歯並びに近づけます。
装着のコツ
顎間ゴムの装着は最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れると簡単にできるようになります。装着時間やゴムの交換タイミングは歯科医師の指示を守りましょう。
ワイヤーとは?
ワイヤーは、矯正装置の中で歯を動かすためのメインのパーツです。ブラケット(後述)に通して装着し、歯に力を加えることで歯並びを整えます。
ワイヤーの種類
- 金属ワイヤー
強度が高く、歯を効率的に動かすことができます。 - ニッケルチタンワイヤー
柔軟性があり、細かい調整に向いています。
ワイヤーの交換頻度
ワイヤーは治療の進行に合わせて定期的に交換されます。交換時には軽い違和感を覚えることがありますが、次第に慣れていきます。
ブラケットとは?
ブラケットは、歯に直接装着する小さなパーツで、ワイヤーを固定する役割を果たします。ブラケットとワイヤーが連動することで歯を動かしていきます。
ブラケットの種類
- メタルブラケット
一般的な金属製のブラケットで、丈夫で効率的に治療が進められます。 - セラミックブラケット
歯の色に近い素材で目立ちにくく、審美性に優れています。
装着時の注意点
ブラケット装着後は、特に清掃を丁寧に行う必要があります。ブラケットの周りに汚れが溜まりやすいため、専用の歯ブラシやデンタルフロスを使用しましょう。
矯正は始まったけど、歯磨きをしない!という人は、プラークがついて大変なことになります。がんばって歯磨きをしましょう。
まとめ
矯正治療には、多くの専門用語や道具が使われますが、それぞれに重要な役割があります。IPRで歯を削ってスペースを作ったり、オープンコイルで隙間を広げたり、顎間ゴムやパワーチェーンで歯や咬み合わせを調整したりと、治療は多岐にわたります。
矯正治療を受ける際には、自分がどの道具を使用しているのか、なぜそれが必要なのかを理解することが大切です。当院では、患者様に丁寧に説明し、不安を取り除きながら治療を進めています。気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
理想的な歯並びを手に入れるために、矯正治療に前向きに取り組んでみませんか?