カテゴリー
カテゴリー

根面う蝕について聞いたことがありますか?

日本矯正歯科学会認定医・歯学博士河底晴紀

先日、ある患者さんとの会話の中で、治療計画や予防についてお話ししていた際に、「知っているのと知らないのとでは違いますね。歯のことを知ることができて良かった」と言っていただきました。この言葉を聞いて、私自身も「知る」ということの重要性を改めて実感しました。

そこで今回は、あまり聞き慣れない「根面う蝕」についてお話ししたいと思います。これを知っているかどうかで、歯の健康管理の仕方が大きく変わる可能性があります。

根面う蝕とは?

「根面う蝕」とは簡単に言えば、歯の根っこの部分にできるむし歯のことです。一般的なむし歯は、歯の表面(歯冠部)に発生するのに対して、根面う蝕は歯の根っこの部分にできるむし歯です。通常、歯の根っこは歯ぐきに覆われて見えませんが、歯ぐきが下がることで根っこが露出し、そこにむし歯ができやすくなります。

 

 

 

 

 

 

歯の根っことはどこ?

歯の構造は大きく分けて、「歯冠部」と「歯根部」に分かれます。歯冠部は、普段私たちが目にする歯の表面部分で、エナメル質という非常に硬い組織で覆われています。一方、歯根部は歯ぐきの中に隠れている部分で、セメント質という組織に覆われています。このセメント質はエナメル質に比べて非常に薄く、むし歯になりやすいのが特徴です。

歯ぐきが下がる原因

歯根部がむし歯になる理由は、歯ぐきが下がり、歯根が露出するからです。歯ぐきが下がる原因としては、以下のようなものがあります。

  • 歯周病: 歯周病によって歯を支える骨が溶けてしまい、歯ぐきが下がることがあります。
  • 強い力でのブラッシング: ゴシゴシと強い力で歯磨きを続けていると、歯ぐきが下がりやすくなります。
  • 歯ぎしりや食いしばり: 強い力が歯や歯ぐきにかかることで、歯ぐきが下がることがあります。

根面う蝕の危険性

歯根部が露出すると、むし歯になりやすい理由はその構造にあります。歯冠部は硬いエナメル質で守られているのに対し、歯根部はセメント質で覆われています。セメント質は厚さ0.2mm以下と非常に薄く、硬さもエナメル質の7分の1しかありません。このため、酸性の環境にさらされるとすぐにむし歯になってしまいます。

また、根面う蝕は一度発生すると広範囲に広がることが多く、時には歯の周りをぐるっと囲む「環状う蝕」になることもあります。特に高齢者の場合、痛みを感じにくいため、気づかないうちにむし歯が進行し、最悪の場合歯が折れてしまうこともあります。

根面う蝕の予防策

根面う蝕を予防するためには、以下のような対策が有効です。

  1. 適切なブラッシング
    歯ぐきが下がっている部分は特に注意が必要です。フッ化物入りや低研磨の歯磨き粉を使用し、優しくブラッシングしましょう。露出した根面に研磨剤が強すぎると、さらにダメージを与えてしまいますので、低研磨タイプのものを選ぶのがおすすめです。

  2. 定期的な歯科検診
    歯周病のチェックやブラッシング指導を受けることで、現状に合わせたケアが可能になります。また、定期的な検診によって、早期発見・早期治療が可能になります。特に高齢者の方は、根面う蝕のリスクが高いので、定期的なチェックが欠かせません。

  3. フッ素塗布
    フッ素は歯の再石灰化を促進し、むし歯の予防に役立ちます。歯科医院でのフッ素塗布や、フッ素入りの歯磨き粉の使用が有効です。

高齢者と根面う蝕

高齢者の残存歯数(残っている歯の数)は増加傾向にあり、それに伴い根面う蝕も多くなっています。若いうちからお口のケアに意識を持ち、定期検診を受ける習慣をつけておくことが、将来の歯の健康に大きな影響を与えます。

根面う蝕は気づきにくい

根面う蝕の怖いところは、痛みを感じにくい点です。通常のむし歯は痛みを伴うことが多いため、早期に気づきやすいですが、根面う蝕は進行するまで痛みを感じないことがよくあります。そのため、むし歯がかなり進行してから気づくことが多く、気づいた時には手遅れになっていることもあります。

早めの対応が大切

「根面う蝕なんて自分には関係ない」と思っている方もいるかもしれませんが、歯ぐきが下がっている方や、強くブラッシングする癖がある方は特に注意が必要です。歯ぐきが下がっている場合、すでにむし歯が発生している可能性もあるため、早めに歯科医院で診てもらうことをおすすめします。

最後に

このブログを通じて、根面う蝕について少しでも知識を深めていただけたら幸いです。歯科医院にしばらく行っていない方や、歯ぐきが下がっていると感じる方は、ぜひ一度当院にご相談ください。むし歯は早期発見・早期治療が大切です。「思い立ったが吉日」、ぜひお越しください。

この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。

◾️資格

・歯学博士

・日本矯正歯科学会認定医

◾️所属

日本臨床歯科学会(SJCD)

K-Project

・FCDC

MID-G 

広島県歯科医師会

福山市歯科医師会 理事

一般社団法人福山市歯科医師会附属福山歯科衛生士学校 歯科矯正学講師

 

ページの先頭へ戻る