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睡眠時無呼吸症候群 〜ただの不眠ではなく病気です

こんにちは。トリートメントコーディネーターの重森です。

暑い夏も終わり、初秋の頃を迎えました。

秋・・・というと「秋の夜長」という言葉がありますね。

秋が深まるにつれて夜が長くなることを意味します。

ちなみに「夜長」とは秋の季語のひとつです。

正岡子規が作った俳句の中に、

 ・・・長き夜や障子の外をともし行く・・・

という一句があります。

これは、秋の夜長になかなか寝付けないときに、ふと障子に目をやると外の廊下を灯をともして通り過ぎる姿があった、自分以外にも起きている人がいることでホッとする安心した様子を詠んだ俳句です。

あなたもこの正岡子規のような思いをしたことはありませんか?

「ああ、ほかの人も起きているんだな・・・」

と、ホッとしている場合ではありません。

なかなか寝付けない・・・

これ、ある病気が原因かもしれませんよ・・・!

・・・ということで

今回は「睡眠時無呼吸症候群」についてお話ししたいと思います。

「歯医者さんのブログなのになぜ睡眠時無呼吸症候群??」

と思われる方もいらっしゃると思います。

実は治療方法のひとつとして、歯科での治療があるのです。

治療方法はあとでお話しするとして、

まずは「睡眠時無呼吸症候群」とは何か?説明していきましょう。

【睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?】

睡眠時無呼吸症候群、英語では「sleep apnea syndrome」といい、その頭文字をとって「SAS(サス)」と呼ばれています。(以降、文中ではSASと表記します)

簡単に言えば、SASは、睡眠時にいびきや無呼吸を繰り返す、睡眠障害のひとつです。

ただし、単に呼吸が止まるだけの病気ではありません。

呼吸が止まれば脳や身体は酸欠状態に陥り、全身に十分な酸素が送られません。

そうなると、睡眠の質が悪化し、昼間に強烈な眠気が起こります。

また放置しておくと突然死や循環器系の病気など、さまざまな悪影響をもたらす怖い病気なのです。

SASが日本で大きな注目を浴びたのは、20032月に起きたJR新幹線の事故です。

新幹線が所定のホーム停車位置より100m手前で自動制御装置が作動して緊急停止。

車掌が運転席に駆け付けたところ、運転士が居眠り運転をしていたというのです。

その後の検査で、その運転士はSASと診断されました。

この事故では幸いにもケガ人はいませんでしたが、

もし自動車を運転していたら・・・大事故になっていた可能性もあります。

【睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状】

SASの代表的な症状には以下のようなものがあります。

・いびき(気道が狭くなっているのでいびきをかく)

・歯ぎしり(歯ぎしりをしたあとに無呼吸になることが分かってきた)

・無呼吸、低呼吸

・日中の眠気

・集中力、記憶力の低下(睡眠不足は脳の働きを鈍らせる)

・不眠、途中覚醒(夜中に2回以上目が覚める日が週に3日以上ある)

・夜間頻尿(何度もトイレに行く)

・寝汗(無呼吸時は起きているときよりも息苦しく寝汗をかいてしまう)

・起床時の頭痛(すっきり目覚めることができない)

・抑うつ(やる気がでない、食欲がわかない、イライラするなど)

 

【睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因】

それでは、なぜ、寝ている時に無呼吸になるのでしょうか?

それは気道が閉塞してしまうからです。

 

 

 

 

 

 

SASの患者さんの約9割がこのパターンに該当します。

健康な人であっても仰向けで寝る事によって重力で舌などが下り気道が狭くなります。

さらに睡眠中は副交感神経が優位に作用しており、喉や首回りの筋肉の緊張もゆるんでいます。

しかし、健康な人の場合はその程度で気道が狭くなることはあっても閉塞まではすることはありません。

SASが起こる大きな原因のひとつは、肥満です。

肥満で喉の内側に脂肪がつくと、そのぶんだけ気道が狭くなります。

米国人の場合はSAS患者の90%以上が肥満という報告もあります。

日本人は米国人に比べて肥満者が少ないので、これまではSASの患者さんは少ないと考えられてきました。

しかし、最近では食生活などの変化とともに日本人でも肥満が原因によるSAS患者が増加しており、特に働き盛りの3060歳の男性に急増しています。

そのほかの原因としては以下のようなことがあげられます。

・顔の形、首まわり、骨格

  あごが小さい為、気道の圧迫が起きやすい。

  鼻が平べったいので喉の奥が狭くなって口呼吸に頼らざる得ない構造。

・鼻の病気などの機能的異常

  上気道が狭い、扁桃肥大、のどちんこが大きく長い、舌が肥大している。

【睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療】

SASが疑われる場合は、耳鼻咽喉科、呼吸器内科、循環器内科、口腔外科などを受診します。

もし可能であれば睡眠外来(睡眠障害専門外来)を受診されることがベストです。

治療法としては以下のようなものがあります。

CPAP(シーパップ)

 

 

 

 

 

 

 

 

SASの患者さんへの治療の第1選択肢となるのが、「CPAP(シーパップ)」と呼ばれる治療法です。

マスクを介して空気を気道へ送り込み、常に圧力をかけて空気の通り道である気道が塞がれないようにする治療法です。

この治療を適切に行う事により、睡眠中の無呼吸やいびきが減少して快適な睡眠をとることができます。

物理的要因を切除する

手術による治療を行うこともあります。

たとえば、扁桃腺が肥大して気道を閉塞しているような場合は、扁桃の切除手術をします。

また、鼻の状態に問題がある場合は、手術によってその原因を取り除くこともあります。

ただし、大人の場合、このような外科的な手術による治療はSASでは非常に限定的なものです。

マウスピース

 

 

 

 

 

 

はい、やっと登場です、マウスピース。

歯医者さんで作製します。これが歯科での治療法ですね。

口の中にマウスピースを入れて、そのまま寝てください。

この治療によって、いびきを90%抑えられるという報告もあります!

いびきは気道が狭くなることでひどくなりますので、いびきが抑えられるということは気道が狭くなるのを抑えているということです。

この治療法は、

・口にはめるだけで高い効果

・比較的安価である

・小型で旅行、出張にも持ち運べる

という利点があります。

歯科で診察後、歯型をとり、それに合わせて作製する医療用のマウスピースですので、

通販や既製品で手に入るいびき防止グッズとは異なります。

医療用のマウスピースは、口の中にはめ込むと、下あごが出て舌の位置が上がり気道が広がって空気が通るようになり、呼吸がしやすくなります。

もちろん、当院でも作製可能ですので、ご心配な方はご相談くださいね。(耳鼻科での検査をした後でマウスピースを作成してくださいという紹介状があれば保険適用となります。)

【寝不足は万病のもと・・・】

SASによって睡眠不足が日常化すると、さまざまな病気を引き起こす可能性が高まります。

高血圧

30歳以上の日本人の4割以上がかかっている国民病のひとつです。

放置しておくと心疾患、脳卒中を引き起こす危険因子ですが、自覚症状がほとんどないのでサイレントキラー(物言わぬ殺し屋!)とも呼ばれています。

高血圧になる原因はいろいろありますが、睡眠不足もそのひとつです。

糖尿病

近年、インスリンのはたらきは睡眠不足が原因で低下するという研究結果が報告されています。

4時間睡眠が1週間続けば糖尿病の初期状態になる」というアメリカの大学からの研究発表もあったとか・・・。

糖尿病を放置していると、網膜症や腎症などの合併症を起こします。

狭心症、心筋梗塞、突然死

睡眠中に繰り返す大きないびきや無呼吸による低酸素状態などが影響してこれらの病をひきおこす可能性が高くなります。

【♪秋の夜長を鳴き通す・・・虫のこえ♪・・・を聞きながら・・・】

秋の夜長に、読書をしたり、お酒を呑んだりするのはストレス解消にもなり楽しいですよね。

ストレスも万病のもと!

虫の声を聞きながら散歩をするのもリラックスできますよ。

睡眠も充分とりながら、秋の夜長を楽しんでください。

この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。

◾️資格

・歯学博士

・日本矯正歯科学会認定医

◾️所属

日本臨床歯科学会(SJCD)

K-Project

・FCDC

MID-G 

広島県歯科医師会

福山市歯科医師会 理事

一般社団法人福山市歯科医師会附属福山歯科衛生士学校 歯科矯正学講師

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