ハンバーガー、ケーキ、ドーナツ。町を歩けば柔らかくて美味しい食べ物がたくさんあふれています。現代人は昔の人より柔らかい食べ物を多く摂取しているので噛む回数がとても少ないです。弥生時代の1回の食事で噛む回数は約4000回で食事の時間は約51分だったのに対し、江戸時代には1500回になり、現代は620回約11分と大幅に噛むことが減っていることが数値から見えてきます。
噛むことは顎の発達を促進させます。永久歯が生えてくるスペースがないと永久歯同士が重なって生えてしまい、歯並びに影響が出てきます。歯が重なると汚れが溜まってしまい、虫歯や歯周病になりやすいお口になってしまいます。顎の成長は成人になるにつれて緩やかになっていくので、小さい時からしっかり噛んで歯が並ぶスペースを確保することが大切になってきます。
噛むことで得られる効果は顎を鍛えることだけではありません。
【卑弥呼の歯がいーぜ】という言葉を聞いたことはありますか?この言葉は日本咀嚼学会の標語で、噛む事の8大効用を咀嚼回数の多かった弥生時代の卑弥呼にかけて表したものです。
ひ「肥満防止」:よく噛むことで脳が満腹感の信号を早く発信し、早食いしたときより食べ過ぎることを防ぎます。
み「味覚の発達」:多種の食べ物を食べれば味覚が発達します。
こ「言葉の発音」:口の周りの筋肉が発達して発音がよくなります。
の「脳の発達」:口を開け閉めすることで通常よりも多くの酸素や栄養が脳に届き、脳細胞の活性化を促します。
は「歯の病気予防」:噛むことにより唾液が分泌され、虫歯や歯周病を予防します。
が「癌予防」:唾液の成分であるペルオキシターゼは食品中の発癌性物質を中和する働きがあると言われています。
い「胃腸快調」:食品をかみ砕いてから飲み込むことで胃腸への負担が軽くなり、胃腸の働きを正常に保ちます。
ぜ「全身の体力向上」:噛みしめる力を育てることで全身に力が入り、体力や運動神経の向上、集中力を養うことに繋がります。
食べ物は噛み応えのあるものを選ぶと良いと思います。しっかり噛まないと飲み込めない食材は噛む回数を増やします。
するめ、いか、たこ、こんにゃく、ごぼう、れんこん、きのこ、ナッツ類など弾力があったり食物繊維が豊富なものがおすすめです。おやつを選ぶ時、柔らかいケーキより歯ごたえのあるせんべいの方が良いです。でも柔らかいせんべいもあるので、迷ったときは比較してどちらの方が噛む手助けをしてくれそうか選ぶと良いのではないでしょうか。お子さんと一緒にクイズを出しながら考えてみても良いかもしれませんね。
固いものばかり選ばなくても普段口に入れた食べ物を30回噛む意識を持ってみたり、食事に集中するため「ながら食べ」をやめてみると良いかもしれません。普段の調理方法でも野菜を細かく小さく刻むより大きくザク切りにすることで自然と噛む回数を増やすことに繋がっていきます。調理の手間も省けますね。是非試してみてください。
この記事は、河底歯科・矯正歯科院長河底晴紀が書いております。
・歯学博士
・日本矯正歯科学会認定医
◾️所属
・FCDC
・福山市歯科医師会 理事
・一般社団法人福山市歯科医師会附属福山歯科衛生士学校 歯科矯正学講師